0003_歌詞分析;あいみょんさん「今夜このまま」

歌詞分析
紫合ユウ(@yuda_y0u)
____
 
[表記]
抽象的な表現……aⁿ
具体例……bⁿ
[気持ちの表現]……cⁿ
気持ちをワンフレーズで表した部分……dⁿ
「キャッチコピー」……eⁿ
最後の〆……fⁿ
____
 
[1A]
(1A-1)
苦いようで甘いようなこの泡に
くぐらせる想いが弾ける……(a1)
体は言う事を聞かない……(b1)
[「いかないで」って]
[走ってゆければいいのに]……(c1)
 
※a1=b1=c1
 三行とも同じことについて述べている。
 想いが弾ける(a1)=(だから)体は言うことを聞かない(b1)=(だから)走っていければいいのに(c1)
 抽象的な表現(a1)、具体例(b1)、気持ちの表現(c1)という流れ。
・a1
 抽象的な表現ではあるが、「想いが弾ける」という表現は理解しやすい。
 また泡というものも何を表してるのかわからないが、(だからこそ?)想像力の膨らむ表現となっている。
 泡は想い人のようでもあるし、単純にお酒の泡のようにも解釈できる。
・b1
 具体的な表現。
・c1
 気持ちの表現。a1とb1をまとめた気持ちの表現となっている。
 よくある気持ちであるため、共感を呼ぶ。
 
(1A-2)
広いようで狭いようなこの場所は
言いたい事も喉に詰まる……(a2)
体が帰りたいと嘆く……(b2)
[「いかないで」って]
[叫んでくれる人がいればなぁ]……(c2)
 
※a2=b2=c2
・a2
 「言いたい事も喉に詰まる」a1より具体的な抽象表現となっている。
・b2
 具体的な表現。
・c2
 気持ちの表現。a2とb2をまとめた気持ちの表現となっている。
 c1と押韻関係にある。
 
[1B]
抜け出せない
抜けきれない……(a3)
[よくある話じゃ終われない]……(c3)
簡単に冷める気もないから……(d1)
「とりあえずアレ下さい」……(e1¹)
 
※a3+c3, d1, e1¹.
 ライラックの[1B]と同様のaⁿ+cⁿ(; a3+c3)という構造が見られる。
・a3+c3
 a3はc3にかかる抽象的な表現。
 抽象表現のあとすぐに気持ちの表現が来ることでAメロとの差異が生まれる。
・d1
 簡単に冷める気もないから、だから? 続きはサビでと思いきや、
 次にすぐサビの要素であるe1¹が来てしまう。
・e1¹
 「とりあえずアレください」といったキャッチコピーは本来[1C]に来るべきである。
 ところがここでは要素[抽象押韻構造的要素]が「前倒し」に食い込んでいる。
 このようなメロディやリズムで見られる前倒しを音楽ではシンコペーションと呼ぶが、
 歌詞におけるシンコペーションを「抽象押韻構造的シンコペーション」と名付ける。
 単に「言葉の機能のシンコペーション」と呼んでもいいかもしれない。
 
[1C]
「消えない想いは」……(e2¹)
軽く火照らせて飛ばして……(a4)
[指先から始まる何かに期待して]……(c4)
泳いでく 溺れてく……(b3)
「今夜はこのまま」……(e3¹)
泡の中で眠れたらなぁ……(f1)
 
※e2¹+a4, c4, b3, e3¹+f1.
・e2¹+a4
 「消えない想いは」という第二のキャッチコピーに「軽く火照らせて飛ばして」という抽象表現の組み合わせ。
・c4
 a4が抽象表現であるため、「……期待して」という具体的な気持ちの表現に切り変わる。
・b3
 「泳いでく……」という具体的表現。最後のe3¹+f1という最もインパクトのある部分の前の「落とし」
・e3¹+f1
 「今夜はこのまま」というタイトルが回収される。
 今夜はこのまま、泡の中で眠れたらなぁという抽象的だが想像しやすい(しかし具体的ではない)表現で終わる。
 
[2A]
(2A-1)
だんだん息もできなくなって
心の壁も穴だらけで……(a4)
制御不能 結構不幸?……(b4)
[自暴自棄 です。]……(c4)
 
※a4=b4=c4
 基本的には[1A]と同じ。
・a4
 抽象的な表現ではあるが、「心の壁も穴だらけで」という表現は理解しやすい。
・c4
 なんなのだろう? と疑問を出している具体的な表現。
・b4
 気持ちの表現。a4とb4をまとめた気持ちの表現となっている。
 [2A]以降が自暴自棄さのつきまとう歌詞であることがここで明示される。
 
(2A-2)
そんなに多くはいらないから
幸せの横棒ひとつくらいで……(a5)
[満たされたい 満たしてみたい]
[乱されたい 会いたい]……(c5)
いつかの誰かに……(b5)
 
※a5=c5=b5
 基本的には[2A]と同じ。
 ただしbⁿとcⁿが入れ替わり、c5, b5という順序になることでインパクトを出している。
・a5
 「そんなに多くは要らない」「幸せの横棒ひとつ……」という表現は理解しやすい。
・c5
 気持ちを列挙する技法。
・b5
 具体的表現。a4とc4が誰に対する表現か明らかになる。
 
[2B]
やるせない
やりきれない……(a6)
[よくある話じゃ終われない]……(c6)
簡単に辞める気もないから……(d2)
「とりあえずアレ下さい」……(e1²)
 
※a6+c6, d2, e1²
 基本的に[1B]と同じ。
 ライラックの[1B]と同様のaⁿ+cⁿ(; a6+c6)という構造が見られる。
・a6+c6
 a6はc6にかかる抽象的な表現。
 抽象表現のあとすぐに気持ちの表現が来ることで[2A]との差異が生まれる。
・d2
 「簡単に”冷める"気もない」が「簡単に”辞める"気もないから」に変わる。
 ここでもd1と同じように「だから? 続きはサビで」と思いきや、
 次にすぐサビの要素であるe1²が来てしまう。
・e1²
 「とりあえずアレください」というe1¹と全く同じ抽象押韻構造的シンコペーションが来る。
 
[2C]
「言えない想いは」……(e2²)
軽く飲み込んで 隠しちゃって……(a7)
[鼻の先に取り付いた本音に油断して]……(c7)
抱かれてく 騙されてく……(b6)
「今夜の夜風に」……(e3²)
吹かれながら 揺れながら……(b7)
 
※e2¹+a7, c7, b6, e3²+f2.
・e2¹+a7
 「言えない想いは」という第二のキャッチコピーに「軽く火照らせて飛ばして」という抽象表現の組み合わせ。
 [1C]の「"消えない"想いは」から「言えない想いは」と変化している。
 また「軽く火照らして”飛ばして(4音節)"」から「軽く飲み込んで”飛ばしちゃって(6音節)”」と音節が増加している。
 これにより”違和感”が生まれ、ここ自体も巨視的なパンチとして機能する。
・c7
 a4が抽象表現であるため、「……油断して」という具体的な気持ちの表現に切り変わる。
・b6
 「抱かれてく……」という具体的表現。最後のe3²というインパクトのある部分の前の「落とし」
・b7
 「今夜の夜風に」というタイトルの変化形。
 今夜はの夜風に吹かれながら揺れながらという具体的表現で終わることで、
 次[3D]に接続するための「落とし」として機能する。
 
[3D]
[ねぇ もう 帰ろう 帰ろう]……(c8)
影も もう ねぇ 薄くなって……(a9)
結局 味のない 味気のない……(a10)
夜が眠る……(b8)
 
※c8+a9, a10+b8
・c8+a9
 ねぇという投げかけや気持ちが列挙されている部分。
a10+b8
 抽象的な(形容)表現と具体的な対象の表現の組み合わせ。
 bⁿで終わるのは落としの役割となっている。
 次に間奏ではなく落ちサビが来るため段階的に落とす目的があると思われる。
 
[3C]
「癒えない想いが」……(e2³)
加速するばかりなんだ……(a9)
[止められない]……(c10)
放たれてく 夜になる……(b10)
「私はこのまま」……(e3³)
 
※e2¹+a7, c7, b6, e3³
・e2³+a9
 「癒えない想いは」という第三のキャッチコピーに「加速するばかりなんだ」という抽象表現の組み合わせ。
 [2C]の「軽く飲み込んで”飛ばしちゃって(6音節)”」と「……ばかりなんだ」は同じ6音節。
・c10
 a9が抽象表現であるため、「止められない」という具体的な気持ちの表現に切り変わる。
・b10
 「……夜になる」という具体的表現。最後のe3³という最もインパクトのある部分の前の「落とし」
・b7¹+f1
 「私はこのまま」というタイトルが回収される。
 今夜はの夜風に、吹かれながら揺れながらという具体的表現で終わることで、
 次[3D]に接続するための「落とし」として機能する。
 
[4C]
「消えない想いは」……(e2⁴)
軽く火照らせて飛ばして……(a11)
[指先から始まる何かに期待して]……(c11)
泳いでく 溺れてく……(b9)
「今夜はこのまま」……(e3⁴)
泡の中で眠れたらなぁ……(f3)
 
誰かの腕の中で……(b10)
甘い夢を見ながら……(b11)
眠れたらなぁ……(f4)
 
※e2⁴+a11, c11, b9, e3⁴+f1, b10+b11, f4.
e2⁴+a11, c11, b9, e3⁴+f1
 [1C]と同じ。
・b10+b11
 f4にかかる具体的表現。最後の締めの具体例。
・f4
 「(nの中で)眠れたらなぁ」という気持ちをまとめた最終表現。
 二回繰り返すことで印象的になる。
 
____//
 
・抽象歌詞構造表
[1A]
 a1, b1, c1,
 a2, b2, c2.
[1B]
 a3+c3,
 d1, e1¹.
[1C]
 e2¹+a4, c4,
 b3, e3ⁿ+f1.
[2A]
 a4, b4, c4,
 a5, c5, b5.
[2B]
 a6+c6,
 d2, e1².
[2C]
 e2²+a7, c7,
 b6, e3²+b7
[3D]
 c8+a9,
 a10+b8
[4C]
 e2⁴+a4, c4,
 b3, e3⁴+f1.
 b10+b11, fl.
 
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0000_抽象歌詞構造表について

 

 こちらについて。

 

⑴抽象歌詞構造は全て[aⁿ, bⁿ, cⁿ, dⁿ enⁿ, fⁿ]という6つの要素に還元することができる。

⑵[aⁿ, bⁿ, ……, fⁿ]は変項であり、任意の意味-機能の表現が入る。[aⁿ, bⁿ, cⁿ]という3つの変項のポテンシャルエネルギーは[bⁿ<aⁿ<cⁿ]という傾向にある。

⑶そのため bⁿ を「落とし」として使用する例が頻出する。

⑷[dⁿ, enⁿ, fⁿ]の傾向として以下の点が挙げられる。

・dⁿ には気持ちをワンフレーズで表した表現が入る

・enⁿ にはキャッチコピー的表現が入る

・fⁿ には最後の〆の表現が入る

[nA]
 aⁿ, bⁿ, cⁿという順序が基本になり、変項の順序は入れ替わることもある。
 また2A以降は簡略化されることもある。

[nB]
 (aⁿ+cⁿ) ∨ (aⁿ, cⁿ)というセットが見られる部分。
 最後は[dⁿ]で終わるのが基本ではあるが、[dⁿ, enⁿ]という言語機能的シンコペーションが見られる場合もある。
 この部分も[2B]以降は簡略化されることがある。
 必要最低限の要素はdⁿ。

[nC]
 (enⁿ+aⁿ) ∨ (enⁿ, aⁿ)というセットが見られる。
 enⁿは2つ以上見られることが多い。
 最後はfnで終わる。

[nD]
 (aⁿ+cⁿ) ∨ (aⁿ, cⁿ)というセットが見られる。

 

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0001_Lilac_Minami

[1A]

 a1, b1, c1,

 b2, a2, c2.

[1B]

 a3+c3

 a4+c4.

 a5, d1.

[1C]

 e1¹, e1², e1³+a9

 e1, e1, e1+a10

 f1.

[2A]

 b6.

[2B]

 d2.

[2C]

 e2¹, e2², e2³+a11

 a12, e1, b7, f2.

[3D]

 a13, a14, a15, a16, c5

[4C]

 e3¹, e3², e3³+a9

 e3, e3, e3+a10

 f3.

 

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0002_Konya Kono Mama_Aimyon

[1A]

 a1, b1, c1,

 a2, b2, c2.

[1B]

 a3+c3,

 d1, e1¹.

[1C]

 e2¹+a4, c4,

 b3, e3ⁿ+f1.

[2A]

 a4, b4, c4,

 a5, c5, b5.

[2B]

 a6+c6,

 d2, e1².

[2C]

 e2²+a7, c7,

 b6, e3²+b7

[3D]

 c8+a9,

 a10+b8

[4C]

 e2+a4, c4,

 b3, e3+f1.

 b10+b11, fl.

 

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0002_歌詞分析;美波さん「ライラック」

美波さん「ライラック」歌詞分析

紫合ユウ(@yuda_y0u)

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歌詞分析するにあたって、まずこちらをお読みください。


[表記]
気持ちの表現……aⁿ
具体例……bⁿ
[装飾造語]……cⁿ
気持ちをワンフレーズで表した部分……dⁿ
「キャッチコピー」……eⁿ
最後の〆……fⁿ
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[1A]

(1A-1)

いつかの声が今僕の心を窮屈にしてい……(a1)
ああだったんでしょ こうだったんでしょ……(b1)
[身勝手解釈receiver] ……(c1)

※a1=b1=c1
 三行とも同じことについて述べている。
 心を窮屈にする(a1)=ああだったんでしょetc.(b1)=身勝手解釈receiver(c1)
 気持ち(a1)、具体例(b1)、装飾造語(c1)という流れ。
・a1
 また「いつかの声」という曖昧な表現で色々なことを想像・連想させ、
 「心を窮屈に……」という気持ちの表現をすぐ次に持ってくることで
 歌詞で言いたいことを確定する。
 最初の一行(a1)でその後の歌詞が聴かれるかが決定するのでここでは失敗できない。
・b1
 「ああだったんでしょ……」というa1の「心が窮屈」な具体例を挙げる。
 よくありがちな具体例でないと広い範囲のターゲットに届かなくなるので注意。
・c1
 a1とb1を一言でまとめる造語。
 フレーズの切れ目なのでここがダサいと終了する。
 身勝手解釈という単語で明快に意味がわかり、
 receiverで英語のかっこよさ+後々読んだときに意味(身勝手解釈の受信機)がわかるようにする。
 

(1A-2)
変わらなきゃ飽きましたって 変われば変わりましたよねって……(b2)
一体なんだい?それなんだい?……(a2)
[矛と盾]は無くならないようでして……(c2)

※b2=a2=c2
 これも同じことについて述べている。流れはaとbが逆転するが、基本的にa1~c1の流れを汲んでいる。
 具体例(b2)、気持ち(a2)、装飾造語(c2)という流れ。
 [a1:c1]と[b2:c2]で巨視的な意味での押韻関係がある。
・A1-1, 2について
 押韻関係があると言った件について。
 A1-1とA1-2の二行目、
 b1の「ああだったんでしょ……」に対する答えがa2「一体なんだい……」となっており、
 ここが一つの意味的な押韻
 三行目も「身勝手解釈receiver」と「矛と盾」が両者とも装飾造語cⁿであり押韻関係にある。
 またA1-1とA1-2の二行目以降でひとつの押韻とみなすこともできる。
 
[1B]
(1B-1)

幸せはピンぼけする[不良品アイシャッター]……(a3+c3)
苦しいこと[繊細に映る高画質レンズ]……(a4+c4)

※a3+c3→a4+c4
 Aメロと逆でaⁿ同士で、またaⁿ+cⁿ同士で対照的なことを述べている。
 気持ちaⁿと装飾造語cⁿの距離が近くなりパンチが増している効果もある。
 気持ち(aⁿ)+造語(cⁿ)を二回繰り返すことで意味的な押韻関係にある。
 また意味的な押韻の距離は[1A]の6行から2行に縮まり、より緊迫した雰囲気を出している。

 

(1B-2)

精一杯やってんだ 別に君の為じゃない……(a5)
ねえそうだろ?
性に合わないことして生きれるほど余裕ない……(d1)

※a5+d5, aⁿ⁻¹+bⁿ+cⁿ→d5
 a5のはじめにおいてd5に向かうための「精一杯」という単語が出てくる。
 また音楽自体はここで落ちているので
 AメロからBメロまでの気持ちをまとめた文がd5となる。
 「性に合わないことして生きれるほど余裕がない」だから……? 続きはサビで。

 

[1C]
人生そうハイに……(e1¹)
「人生そう前に」……(e1²)
「人生聡明に」生きたいのは山々だが……(e1³+a9)
割と根拠も証明もないような現状世界くらいが丁度よくて……(a8)
「人生そうラフに」……(e1⁴)
「人生そうタフに」……(e1⁵)
「人生そうゲーム」みたいに単純なものでいいだろ……(e1⁶+a10)
A・Bボタンで賭けて決めたい未来もあるんだ……(f1)
※(e1ⁿ×3+a8)+(e1ⁿ⁺³×3+a9)+f1
 e1ⁿを三回繰り返してaⁿを付け加えたものが2回繰り返され、最後にf1が付け加えられる構造。
 [1C]全体で「e1ⁿ×3+aⁿ」が二回繰り返されていて、ここが押韻関係にある。
 また、[1B]の最後の行のd5と[1C]のe5で押韻関係にある。
 また、1Cと4Cはほとんど同じことが書かれているため、
 1Cの時点で全体の印象を決定しなくてはいけない。

 

[2A]
ヒーローのプライベートはきっとしょうもないと思うんだ
割とネガティヴだったり 普通の人間してるさ……(b6)
※b6
 普通の人間に対する歌だというそれとない示唆になっていると思われる。
 反復的でないため[1A]のような技法は見られない。
 「くどく」ならないためだと思われる。
 
[2B]
他人の声に惑わされるほど余裕ない……(d2)
 ※d5と同じ機能。2Aまでのまとめ。
 
[2C]
「もういっそ不乱に」……(e2¹)
「もういっそ不安定に」……(e2²)
「もうきっと説明書」どおりは綺麗過ぎてしまうから……(e2³+a11)
汚せ 壊せ 決められたつまらない固定概念なんて捨てろ……(a12)
「もう実際」どうにでもなれ……(e2⁴)
押し殺した声でやりたくないことに……(b7)
軽々しく頷くのはやめろ 上げろ 顔を 上げろ……(f2)
※2C
 1Cとの構造的押韻関係にあるので、2Cは1Cの変化形になっている。
 1Cの最後f1が単なる自分の主張なのに対して、
 f2では相手への命令形となりより強い主張となっている。
 
 b7の箇所は1Cではaⁿであり、bⁿ系統に変化している。
 これはf2で気持ちの表明をすることから、
 一行前に「落とし」を入れf2を強調する目的だと思われる。
 
[3D]
疲れてしまったんだ……(a13)
人のエゴで造られた虚にだけはなりたくはなくて……(a14)
時間はまだあると いざ一人目の前にした後悔……(a15)
心電図はグシャグシャのまんま思うことはただ一つ……(a16)
憂憂憂憂憂憂憂……(c5)
※3D
 aⁿ系列からcⁿへと移ろうのはAメロと同じ構造。
 c5は「うれい」の「れ」を巻き舌にすることで印象的にしている。
 Aメロの代わりに入るAメロと違う歌詞部分と解釈できる。
 この後、Bメロの代わりに間奏が入り、それがBメロの役割をする。
 
※4Cは1Cとほとんど同じため省略。微妙に変えるところにパンチを感じる。
 1Cと4Cが同じということは、1Cの時点で全体の印象を決定しなくてはいけない。
 これは逆に言うとここで全体の印象を崩してはいけないことになる。
 したがって、変化は些細なものか、あるいは完全に1Cのリピートとして4Cを導入することが推奨される。
 
[4C]
省略

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・抽象歌詞構造

[表記]
気持ちの表現……aⁿ
具体例……bⁿ
[装飾造語]……cⁿ
気持ちをワンフレーズで表した部分……dⁿ
「キャッチコピー」……eⁿ
最後の〆……fⁿ
____
[1A]
 a1, b1, c1,
 b2, a2, c2.
[1B]
 a3+c3
 a4+c4.
 a5, d1.
[1C]
 e1¹, e1², e1³+a9
 e1⁴, e1⁵, e1⁶+a10
 f1.
[2A]
 b6.
[2B]
 d2.
[2C]
 e2¹, e2², e2³+a11
 a12, e1⁴, b7, f2.
[3D]
 a13, a14, a15, a16, c5
[4C]
 e3¹, e3², e3³+a9
 e3⁴, e3⁵, e3⁶+a10
 f3.
 
____//

 

 

0001_歌詞分析について

歌詞分析をするにあたって
 

 
・はじめに
 インターネットを見渡してみると、作詞法というものは音楽理論のように体系的に説明されていることがないように見受けられます。しかし、実際に分析してみるとポピュラー音楽と同等の複雑さを持った法則的な構造物であることがわかります。
 商業音楽の作詞者のためにこの文章を書きます。
 
・作詞の法則性について
 エネルギーがE=mc²という簡単な方程式で表せるように、基本的に自然や人間は複雑に見えてシンプルな法則性でできています。その中で作られる歌詞やそれを含む音楽も同様です。
 物理法則に反するものが存在してもこの宇宙に干渉できないのと同じように、法則に反するほど人間への働きかけは無に近づいていく、つまりどんどんと売れなくなっていきます。
 そして歌詞というシステムの法則性の中枢をなすものが押韻です。
 
押韻について。
 英語圏では押韻が重要で、歌詞にこれがないと売れないと云われています。
 例えばマインド[mind]とブラインド[blind]、これらは読みの響きが似ていることから押韻として利用されたりします。ライム、韻をふむ、などとも言います。
 
例)High on Life / Martin Garrix
 ・1番Aメロ[Verse1]
 Killed the demons of my mind
 Ever since you came around
 We're a river, running wild
 How could I have been so blind?
 
 下線部が全て押韻です。マインド、アラウンド、ワイルド、ブラインドという韻を踏んでいます。
 英語圏への進出をしている韓国では、例え韓国語で歌っていても韻を意識しています。
 日本語でも無意識への働きかけが期待されるかもしれません。
 
・日本語歌詞の押韻について
 日本語の場合は押韻はダジャレを連想させるという意見もあり、効果的かつハイセンスに用いないと危険です。そのためか英語圏と違い、「意味そのもの=意味の構造=フレーズの機能」での押韻関係がよく見られます。
 
例)ライラック / 美波
 ・1番Aメロ
 いつかの声が今僕の心を窮屈にしていく
 ああだったんでしょ こうだったんでしょ
 身勝手解釈receiver
 変わらなきゃ飽きましたって 変われば変わりましたよねって
 一体なんだい?それなんだい?
 矛と盾は無くならないようでして
 
下線部押韻です。
身勝手解釈receiver」と「矛と盾」はともに印象的な独自表現で、それが3行ごとに来ることによって機能的な意味での押韻関係となっています。
 
 また、最初の※の「ああだったんでしょ……」に対して「いったいなんだい?」と呼びかけに応じるかたちになっており、ここも広義の押韻係にあります
 
・抽象歌詞構造
 今後アナライズしていくときに出てくる歌詞の構造を「抽象歌詞構造」と名付けることにします。aやcなどで表現される抽象的な歌詞の意味の構造を取り出すのでこのように名付けました。この中に出てくる要素はすべて[aⁿ, bⁿ, cⁿ, dⁿ, enⁿ, fⁿ]という6つの要素に還元することができます。
 
 

 
・おわりに
 このように、日本語歌詞では例のような意味的・機能的な押韻関係が重要になってきます。
 これから分析を進めるにあたって押韻関係を中心に分析していきますので、「意味的な押韻」という概念を念頭に置いておいてください。それでは、よき作詞ライフを。